AI に長く話しかけてると、前と違うことを言い始める現象 — 「最初に読むメモ」で乗り切った話

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AI と長時間話してると、ふと「あれ?さっきまで同じこと話してたのに、急に違うこと言い始めたな」って感じる瞬間、ありませんか。

うちのサイトでは AI と毎日いろんなプロジェクトを動かしているんですけど、1ヶ月のあいだに何回もこの現象にぶつかりました。最初は「今日の AI 機嫌悪いんかな」くらいに思っていたんですけど、よく見ると AI の側がおかしいというより、長い会話のあいだに AI 自身が、最初の前提を少しずつ忘れていくような挙動でした。

調べてみたら、AI 界隈ではこれを「ドリフト」と呼ぶらしいです。本記事は、私がそのドリフトに振り回された1ヶ月のあいだに、「最初に読むメモ」という1枚のファイルで、体感ベースで7割くらい事故を減らせるようになった、その記録です。

ちなみに先に結論を書くと、ドリフトを完全には防げません。ただ、毎回 AI と話し始める前に、決まった1枚のメモを読ませる運用を入れただけで、「あれ?さっきと違うこと言い始めた」事故の頻度がはっきり減りました。同じ悩みを持っている人にとっての、ひとつのやり方として読んでもらえたら嬉しいです。


長く話してると AI が前と違うことを言い始める瞬間がある

具体的にどんな現象かを、最近うちで起きた事故そのままで書きます。

うちは X(旧 Twitter)の自動投稿システムを AI と一緒に運用していて、ある日「最近 X 側の課金体系が変わったみたいだけど、うちのアカウントってちゃんと払えてる?」という話を AI と始めました。AI は調査モードに入って、過去の課金履歴・公開されている料金体系・最新の制度変更を片っ端から並べて、最後にこう言ってきました。

「残高 $4.54 のままだと 1〜2週で枯渇する可能性があります。早めに補充推奨です」

ここまでは普通の助言です。問題はこの後でした。私が「収益上がってないのに $10〜$20 チャージするの、ちょい気になるんだけど」と返すと、AI は急に方針転換して「では最小 $5 で延命しましょう」と言い始めました。さらに「アカウントの投稿が10日間止まっています」「月 $100 の隠れ請求がある可能性があります」と、会話の頭では言っていなかった話を次々追加してきました。

実際にはどれも事実ではありませんでした。X のアプリを開いて最新の投稿を確認したら、昨日も普通に投稿は流れていました。クレジットカード明細を見ても、$100 の請求なんて存在していませんでした。

ここで私が「待って、いま言ってること、最初の前提と違くない?」と何度か切り返した結果、AI 側も矛盾を認めて、軌道修正に入ってくれました。

会話の流れだけを切り出すと、ただの「AI のミス」に見えます。でも実態は少し違って、情報が積み重なっていく途中で、AI が「いま何を判断すればいいのか」を少しずつ取りこぼしていった、という感触のほうが近かったです。

似たことは1回限りではなく、別の日のセッションでも、別のプロジェクトでも、ちょこちょこ起きていました。「最初は冷静で正確だった AI が、長く話していくうちに前提を忘れて、勝手に話を膨らませ始める」── 文章にするとそれだけのことなんですが、運用していると地味にダメージが大きい現象です。


これ、AI の世界では「ドリフト」って呼ばれる現象らしい

うちの中で「なんでこうなるんやろ」とずっと首を傾げていたんですけど、調べてみたらこの現象、AI を業務利用している人たちのあいだで、わりと有名なテーマでした。

呼び方はいくつかあって、

  • ドリフト(drift)
  • 文脈ズレ
  • コンテキスト劣化

このあたりが、わりとよく使われている表現です。本記事ではいちばん短い「ドリフト」を主に使います。

仕組みを噛み砕くと、AI は会話のあいだ中、「これまでの発言ぜんぶ」をひとつの長い文章として読み続けています。会話が長くなればなるほど、その「読み続けないといけない量」が増えていきます。あるところを超えると、AI 側で情報の優先度の判断がだんだん乱れてくる、らしいです。

イメージとしては、会議が4時間目に突入したあたりで、最初の議題の前提を全員忘れているあの感じに近いです。AI 側にも似たような疲れ方が起きているらしくて、最新の発言ばかりを重視し、最初に決めた前提を取りこぼしていく傾向があるそうです。結果として「さっきまでと違うこと」を平気で言い始めることになります。

ちなみに私の中ではこの現象、しばらく「AI のジジィ化」と冗談で呼んでいたんですが、表に出すには言葉が強すぎるので、本記事では「ドリフト」で統一しています(私の語彙の話なので、本筋ではないです)。

大事なのは、ドリフトはAI 側のバグでも、設計ミスでもなく、長い会話を扱う構造そのものから来る現象だということです。AI を提供している会社も、業務利用している企業も、みんな同じ壁にぶつかっています。完全にゼロにはできない、というのが前提です。

つまり「いい AI を選べば直る」話ではなくて、使う側の運用でカバーする話だ、ということが、私の中ではけっこう大きな気付きでした。


対策で「最初に読むメモ」を作った

なお、ここから書く運用は、私がふだん使っている Claude Code(プロジェクトのファイルを直接読み書きできる AI ツール)での例です。ChatGPT や Gemini など、ファイルを直接読みに行かないタイプの AI でも、会話の冒頭にメモの中身を毎回コピペする形で近い効果は出せます。お使いの環境に合わせて読み替えてもらえたら大丈夫です。

完全に止められないなら、被害を最小化する仕組みを入れるしかない、という結論で1ヶ月いろいろ試した結果、いま私が運用しているのが「最初に読むメモ」という1枚のファイルです。

中身は超シンプルで、Markdown 形式のテキストファイルが1つあるだけです。中に書かれているのは、ざっくり以下の3つです。

  1. 今セッションで触る予定のもの(焦点 / 動かしているプロジェクト名 / 現在地)
  2. 直近72時間で確定した決定(誰が何を決めたか・なぜそうしたか)
  3. 未完了タスクと、その優先度

これだけです。ファイル名は内部的に BRIEF.md と呼んでいて、AI 用の作業フォルダの中にぽつんと置いてあります。

運用としてやっていることはもっとシンプルで、AI とのセッションを始めるときに、必ず最初にこのファイルを読ませる、それだけです。

たとえばこんな書き方をします。

「セッション開始時に `~/.claude/BRIEF.md` を読み込んでから、本日の作業を始めてください」

たったこれだけなんですが、この1行があると、AI は冒頭で現在の前提・直近の決定・未完了タスクに最初に目を通してから会話を始めやすくなります。長い会話の中で AI が話の文脈を取りこぼしても、「最初に読んだメモ」と現在の発言にズレが出たら、私の側からツッコミを入れて軌道修正できる、という仕組みが成立します。

中身は毎日少しずつ更新しています。決定が出たら追記し、終わったタスクは消し、関係が薄くなった項目は外す。「いま何を考えるための AI なのか」が、いつも1枚に揃っている状態を保つのが運用の中心です。


運用してわかった「効くこと」と「効かないこと」

1ヶ月くらい続けてみて、ハッキリ効いた効果と、そうでもなかった効果の両方が見えてきました。正直に書きます。

効いたこと

  • セッションをまたいでも、前提が引き継がれる。AI 側のメモリ機能に頼らず、ファイル経由で引き継ぐので、別の AI ツール(Claude / Gemini など)にも同じファイルを読ませるだけで、前提共有がだいたい成立します。
  • 「あれ何だっけ」が減る。私の側でも、メモを書いている時点で頭が整理されるので、AI に説明するときも要点が揃いやすくなります。
  • AI が言ったことの検証が楽。メモに書いてあることと、AI の発言が食い違ったら、それ自体がドリフト検出のサインになります。

効かなかったこと

  • セッション内のドリフトは止められない。1回のセッションが長くなりすぎると、メモの内容も忘れていきます。これは「読むメモ」では防げません。長くなりすぎたら、いったんセッションを切って、新しい AI と一から話し直すのが結局いちばん早かったです。
  • 複雑な前提は書けない。メモは短いほうが効きます。長すぎると AI 側の注意が分散して、優先度の判断が乱れるようです。1枚に収まらない情報は、別のファイルに分けて「必要なときだけ参照」させる形にしました。

つまり「最初に読むメモ」は万能ではないということです。あくまでセッション間の引き継ぎを安定させる装置で、セッション内のドリフトには別の対策(早めにセッション切る・人間がツッコミ役で残る)が必要です。

それでも、入れる前と比べると、「さっきまでと違うことを言い始める事故」が、体感で7割くらい減りました。完全には消えないけれど、消えなくてもいい、という割り切りに辿り着いた感じです。


「最初に読むメモ」運用の実用ハンズオン

ここまで読んで「やってみようかな」と思ってくれた人向けに、うちで実際に動かしている運用の中身を書きます。難しいことはしていないので、AI を仕事で使っているならすぐ真似できるはずです。

1. どこに置くか

特別な場所はなくて大丈夫です。うちの場合は、AI 用の作業ディレクトリ(~/.claude/)の中に1枚置いています。

~/.claude/BRIEF.md

AI 側からアクセスできる場所であれば、どこでも構いません。GitHub のプライベートリポジトリに置いている人もいるそうです。

2. 何を書くか

最低限、以下の3項目があれば運用は回ります。

  • 今セッションの焦点(1〜3つ・優先順位順)
  • 直近72時間で確定した決定(日付付き・誰が決めたか・なぜそうしたか)
  • 未解決の未完了タスク(着手予定・期限・依存関係)

迷ったら最小スタートで大丈夫です。最初は「今セッションの焦点」1行だけでも、ないよりはずっと効きます。

3. いつ更新するか

うちは、セッションが終わるたびに3〜5分かけて更新しています。終了直後だと頭が一番整理されているので、未完了タスクや確定した決定が漏れにくいです。

更新を AI 自身に頼むのもありです。「今日のセッションで確定したこと・未完了で残ったタスクを、BRIEF.md に追記して」と頼めば、ドラフトを作ってくれます。最後の確認だけ人間が入れば、運用負荷はかなり軽くなります。

4. AI に「最初に読んで」と伝える書き方

セッション開始時に AI に渡す指示は、できるだけ短くて構いません。うちで使っている定型はこんな感じです。

「セッション開始時はまずこのファイルを読みます。次に CLAUDE.md → MEMORY.md。開始時に1行だけ確認:『BRIEF読んだ。焦点は◯◯で合ってる?』。」

「読んだ確認」を1行入れるところが地味に効きます。AI が「読んだつもり」になっているだけのケースを、最初の1往復で潰せます。


結論: 完璧を目指さず、毎セッションをリセット可能な仕組みに変える

ここまで書いてきて伝えたかったのは、AI のドリフトは「直す」対象ではなくて、「付き合い方」を変える対象だ、ということです。

AI 側のアップデートで完全になくなる日も来るかもしれません。でも、いまこの瞬間にも AI と仕事を進めたい人にとっては、完璧を待たずに動ける仕組みのほうが価値があります。

うちの場合、「最初に読むメモ」を入れたあとに大きく変わったのは、「セッションは長続きさせるもの」という発想を捨てた点でした。長く話していればいるほど AI と理解が深まる、という暗黙の期待があったんですが、ドリフトの存在を前提にすると、短く切って、新しい AI と新鮮に話し直すほうが、結果として早いということに気付きました。

そのためには、「前のセッションで何が決まっていたか」を人間の頭の中ではなく、ファイルの上に置いておく必要があります。ファイルに残っていれば、毎回新しい AI に同じ前提を渡せます。「最初に読むメモ」は、そのリセットを成立させるための足場として動いています。

完璧を目指さない、毎回リセットする、足場だけは固める。── これが私が1ヶ月で辿り着いた、ドリフトへの折り合いのつけ方でした。

同じところでつまずいている人がいたら、今日からでもメモ1枚で始められます。よかったら試してみてください。


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